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「卒業生サービス」を大学が重要視する理由とは?

大学にとって最も心強い後援者。それは卒業生です。
卒業生とのつながりを維持し、絆を深めるためのポイントとなるのが「卒業生サービス」。
大学を取り巻く環境が厳しさを増すなかで、持続的な発展を図るためにも卒業生サービスの充実がますます重要になっています。
本記事では、日本の大学が展開している卒業生サービスの特徴を整理したうえで、日本の一歩先をいくアメリカの大学の取り組みの一端を紹介し、これからの方向性について考えてみたいと思います。

1. 「卒業生サービス」とは何か

日本の大学の卒業生サービスの特徴について考える前に、まずは卒業生サービスとは何か、明確に定義しておきましょう。
岩手大学の大川一毅教授らのグループは論文の中で下記のように定義しています。

「卒業生(前身校や大学院修了者等も含む)を対象として大学単位で組織的に実施する様々な『便益提供』」(大川一毅・西出順郎・山下泰弘・嶌田敏行「『全国大学における「卒業生サービス」実施状況調査』集計報告」平成25年7月)。

もう少し噛み砕けば、卒業生サービスとは、卒業生との関係維持や母校への愛校心の高揚、あるいは人脈形成などを目的として、大学経費を活用しながら、さまざまな便益(ベネフィット)を提供する活動と考えてよいでしょう。

2. 【日本の大学】卒業生サービスの特徴とは?

ここでは上の定義を踏まえたうえで、日本の大学の卒業生サービスについて整理してみたいと思います。

2-1. 卒業生からの期待感

まずは、日本の大学が「卒業生サービスに対するニーズ」について、どのように捉えているかをみてみましょう。

引用元:大川 一毅、西出 順郎、山下 泰弘、嶌田 敏行「『全国大学における『卒業生サービス』実施状況調査』集計報告」平成25年7月

大川教授らのアンケート調査によると、「強く感じる」「ある程度強く感じる」と答えた大学が国立大学および私立大学で約7割、公立大学で5割弱に上ります。程度の差はありますが、セクターを問わず多くの大学が、卒業生からの期待を感じているといっていいでしょう。

2-2. サービス内容の多様性

では、こうしたニーズに応えるべく、大学はどのような卒業生サービスを展開しているのでしょうか。

今日、国立・公立・私立を問わず多くの大学が「卒業生との関係維持」「卒業生集団の組織化」に向けて、さまざまな卒業生サービスを展開しています。「就職・転職支援」に関しては、どのセクターも半数以上の大学が実施するなど共通点もありますが、卒業生サービスの実施状況や内容については、セクターごとに違いがあるようです。

引用元:大川 一毅、西出 順郎、山下 泰弘、嶌田 敏行「『全国大学における『卒業生サービス』実施状況調査』集計報告」平成25年7月

例えば、「卒業生のためのウェブサイトの開設(併設)」「ホームカミングデーの開催」に関しては、国立および私立大学の半数以上が実施しているのに対し、公立大学の実施率は30%程度にとどまっています。

また、国立大学は「メールマガジンの配信」「名簿の刊行」「交流機会の提供」などを実施しているケースが他のセクターよりも多い傾向にあります。
その一方で、私立大学は「大学による同窓会の組織・運営」「全学同窓会会報・冊子等の発行」「大学施設の優待利用」といった項目で、回答比率が他セクターを大きく上回っています。
また、下記の図を参照すると、私立大学に関しては、設置が古い伝統校ほど、卒業生サービスが活発に実施されている傾向も指摘されています。

引用元:大川 一毅、西出 順郎、山下 泰弘、嶌田 敏行「『全国大学における『卒業生サービス』実施状況調査』集計報告」平成25年7月

3. 主な目的は「関係維持」と「母校への関心向上」

これらの施策の目的については、どのセクターでも「大学と卒業生との関係維持」「卒業生の母校への関心を高める」ことを目的に掲げる大学が多いのが特徴ですが、国立大学では「大学への寄附・寄附金の増加」「全学一体感の形成」などの回答比率が他のセクターと比較して高くありました。
一方、公立大学では「在学生への支援の活性化」を実施目的として位置付ける傾向が強いことがわかります。

引用元:大川 一毅、西出 順郎、山下 泰弘、嶌田 敏行「『全国大学における『卒業生サービス』実施状況調査』集計報告」平成25年7月

3-1. 卒業生サービスの事業計画

10年未満程度の「中期的な事業計画」のなかに卒業生サービスを位置づけている大学は、全体の約2割にとどまっています。
国立大学の割合が若干高い理由は、国立大学法人法による6年間の中期計画の策定が義務付けられており、その中に卒業生サービス事業が盛り込まれているからではないかと推測できます。
私立大学においては周年事業計画の一環として卒業生サービスを盛り込んでいる例もあります。

引用元:大川 一毅、西出 順郎、山下 泰弘、嶌田 敏行「『全国大学における『卒業生サービス』実施状況調査』集計報告」平成25年7月

3-2. 卒業生のニーズに応えているか?

ここまで、日本の大学が実施している卒業生サービスの特徴について、内容や目的、実施体制の側面に焦点をあてて記述してきました。
先に紹介したとおり、大学側は卒業生からのニーズを感じているとのことでしたが、
応えているといえるでしょうか。

「貴学の『卒業生サービス』は、卒業生からのニーズに応えていると感じますか?」という設問に対して、「ある程度応えている」と回答した大学は国立大学で5割弱、公立大学で約4割、私立大学で6割弱に上りますが、「とてもよく応えている」と回答した大学は5%にも満たないのが現状です。

引用元:大川 一毅、西出 順郎、山下 泰弘、嶌田 敏行「『全国大学における『卒業生サービス』実施状況調査』集計報告」平成25年7月

なお、卒業生サービスは、同窓会や校友会などの全学的な卒業生組織と連携して実施するものと、大学が独自に提供するものがあります。
国立および私立大学の約7割が卒業生組織と連携した事業を実施しており、ホームカミングデーや周年記念事業、懇談会、交流会の共済のほか、名簿の編集発行やサテライトオフィスの設置などを進めています。

引用元:大川 一毅、西出 順郎、山下 泰弘、嶌田 敏行「『全国大学における『卒業生サービス』実施状況調査』集計報告」平成25年7月

校友会との連携をすることで卒業生のニーズをより実感し、母校愛を育みやすい大学組織をめざしていることがわかります。
しかし、我々が校友会にヒアリングした際、「若年層の参加が少ない」「卒業生サービスの情報発信方法に課題がある」などの課題が浮き彫りになりました。
これは悲観的に捉えるべきではなく、卒業生サービスには大きな発展の余地が残されていると考えて然るべきでしょう。

4. 日本の大学におけるユニーク事例

日本の大学のなかには、特色のある卒業生サービスを実施している大学もあります。
例えば、早稲田大学は、学生4名と若手卒業生2名でグループをつくり、学食の100円朝食を食べながらフリートークを繰り広げる「早朝ミーティング」を開催した
ほか、クレジットカード会社と提携し、“第2の学生証”として「早稲田カード」を発行しています。

また近年は、卒業生向けのオンラインコミュニティの開設に力を入れる大学も増えてきています。
例えば、東京大学は2006年、卒業生と大学との絆を深めるために「東京大学オンラインコミュニティ(TFT)」を開設しました。約3万6000人の登録者に対して、講演会・講座の優先枠、有名ホテル・レストランの優待などのサービスを提供しています。

慶應義塾大学も卒業生(塾員)限定のソーシャルネットワーキング「慶應オンライン」を開設しています。
塾員36万人のうち約8万人が登録しており、会員には
大学のイベントやニュース、耳寄り情報などを掲載したメールマガジンを月に一度、配信しています。
また、同じ学部や共通の趣味など共通点を持った人同士で塾縁と呼ばれるコミュニティを作成し、交流することができます。

さらに卒業生のライフイベントに関わるサービスを提供している大学もあります。
立教大学はその一例で、立教学院(小・中・高・大学)の卒業生は、立教チャペル(立教学院諸聖徒礼拝堂)で結婚式を挙げることができます。
また、日本女子大学教育文化振興桜楓会はお見合いパーティである「桜楓パーティ」の開催などの結婚相談のほか、転職・再就職希望者に就職情報を提供する「人材銀行」というサービスを提供しています。

一方で、ビジネスに関連の深い卒業生サービスを展開している大学もあります。例えば、大阪大学は、同大学および大阪外国語大学出身の経営者層の交流の場として、年に一度、「大阪大学リーダーズフォーラム」を開催しています。

このほか、ひときわユニークな試みを行っているのが京都造形大学です。作家やクリエイター、研究活動を本業として行なっている卒業生や、独立を目指す卒業見込み学生を支援するために、東京都文京区のアトリエ併設シェアハウスの貸し出しを行なっています。

5. 【アメリカの大学】一歩進んだ卒業生サービスとは

ここまでのまとめから日本の各大学がさまざまなかたちで卒業生サービスを展開していることがわかりました。
実はアメリカの大学はその一歩先をいっています。
ここでは、同志社大学の山田礼子教授の論文を参考にしながら俯瞰したうえで、日本の大学に取り込むべきポイントを探ってみたいと思います。

アメリカの大学における同窓会担当者や広報、資金獲得担当者のための専門職団体「教育発展支援評議会(Council for Advancement and Support of Education)」は、アメリカの大学が行なっている卒業生サービスについて次のように区分しています。

  1. 同窓生向けの教育プログラム
  2. キャリアサービス
  3. コミュニティサービス
  4. 地域ベースでのイベント
  5. ホームカミングやリユニオン
  6. 同窓生向けの旅行プログラムの提供

このうち5「ホームカミングやリユニオン」は日本の大学も力を入れている分野です。また、4の「地域ベースでのイベント」についても、早稲田大学が、在学生に地域で活躍する卒業生のもとを訪れてもらい、地域コミュニティと触れ合いながら多様な価値観を学ぶ交友連携プログラム「先輩に会いに行こう!」を実施するなどのケースがあります。
ただし、これらを除けば、まだまだ手薄な分野が少なくないといいでしょう。
特に、今後力を入れるべきは、2の「キャリアサービス」ならびに6の「同窓生向けの旅行プログラムの提供」だと思います。

例えば、2の「キャリア支援」に関しては、改善の余地がまだまだあると思います。一例としてジョージア工科大学を取り上げてみましょう。同大学は、幹部レベルのポジションについている同窓生を対象としたネットワーキング支援に加えて、子育てを終えた女性が“第2の職”を見つけられるよう、女性の同窓生のみを対象にした教育プログラムとキャリア支援プログラムをセットで実施しています。

また、6の「同窓生向けの旅行プログラムの提供」についていえば、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)が、シニア同窓生向けに生涯学習プログラムと旅行プログラムを組み合わせた「異文化交流の旅」を企画しています。
学びと同窓生の交流を同時に支援する試みを大学側から提供することで卒業生満足度を高めるきっかけにできるのかも知れません。

6. 【これからの卒業生サービス】卒業生との絆をいかに深めるか

先に触れたように、大学にとって卒業生は最も心強い支援者であり、社会とのインターフェースとして欠かすことのない存在です。
これからの大学に求められるのは、これまで以上に卒業生に寄り添った、きめ細かなサービスを提供することを通じて、大学と卒業生との絆をより一層深めていくことだと思います。
そして、卒業生が母校に対して愛着を抱き、誇りに思える大学を創り上げていくことがますます重要になるとみて間違いないでしょう。

<参考・引用文献>

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